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情シスの現状可視化から始める部門変革──業務・スキル・工数の棚卸で次の一手が見える
- 組織変革
- 現状可視化
- 課題把握
- 導入準備

情報システム部門の変革は、新しいツールの導入や組織改編から始まるとは限りません。むしろ、現在どの業務を誰が担当し、どれだけの工数を使い、どのようなスキルを持っているのかを把握できていない状態では、改善施策の優先順位を決めることが難しくなります。
実際、多くの情報システム部門では「忙しい」という認識は共有されていても、何がどれだけ忙しいのか、なぜ改善活動に着手できないのかを説明できないケースがあります。
本記事では、情報システム部門の変革を進めるうえで、なぜ現状可視化が最初のステップになるのか、何を棚卸すべきなのか、可視化した情報をどのように活用するのかを解説します。
- 目次
1. 情シスが「忙しい理由」を説明できない状態はLv.1「管理・統制不全」
情報システム部門の変革で最初に確認すべきことは、現在の業務実態を把握できているかどうかです。担当者ごとの業務内容や負荷状況を説明できない状態では、改善施策の優先順位を決めることができません。
情報システム部門には、システム運用保守、問い合わせ対応、セキュリティ対応、ベンダー調整、システム導入プロジェクトなど、多様な業務が存在します。しかし、長年の運用の中で追加された業務や例外対応が積み重なり、誰が何を担当しているのかが整理されていないケースは少なくありません。
例えば、次のような状況が見られます。
- 担当者ごとに担当システムが固定化されている
- 他メンバーが業務内容を把握していない
- 問い合わせ対応の履歴が個人のメールやチャットに残っている
- 管理者が実際の業務量を把握できていない
- 改善活動や新規施策を検討する時間が確保できない
この状態では、担当者の異動や退職が発生した際に業務継続が難しくなります。また、システム導入や業務改善の検討を行おうとしても、現在の負荷状況が見えないため、どの施策から取り組むべきか判断できません。

情報システム部門の成熟度を段階的に捉える考え方では、この状態をLv.1「管理・統制不全」と位置付けます。担当者の努力によって業務は回っているものの、組織として業務を管理できていない状態です。そのため、変革の第一歩は新しい施策を追加することではなく、まず現状を把握することになります。
情報システム部門の成熟度 Lv.1〜Lv.4 の詳細につきましては、以下の関連ページをご覧ください。
2. 情シスの現状可視化で棚卸しする3つの対象──業務・スキル・工数
現状可視化では、業務、スキル、工数の3つを整理することが重要です。どれか一つだけでは、組織の実態を把握できません。
業務の棚卸しで担当範囲を把握する
最初に整理すべきなのは、情報システム部門が実施している業務です。
業務一覧を作成する際は、「システムA担当」「インフラ担当」といった組織単位ではなく、実際の作業単位まで分解して整理します。
例えば、業務アプリケーション運用であれば、
- 問い合わせ受付
- 障害対応
- マスタ登録
- アカウント管理
- ベンダー問い合わせ
- 定期メンテナンス
といった形で整理します。
この段階で重要なのは、業務の重要度を評価することではありません。まずは現在実施している業務を漏れなく把握することが目的です。
スキルの棚卸しで属人化を把握する
次に、各業務を実行するために必要なスキルと、実際に保有している人材を整理します。例えば、ある基幹システムについて詳細を理解している担当者が1名しかいない場合、その業務は属人化しています。
ここで確認すべきポイントは次のような内容です。
- 特定担当者しか対応できない業務はあるか
- 手順書やマニュアルは存在するか
- ベンダーとの調整を代替できる人材はいるか
- システム導入プロジェクトを主導できる人材はいるか
スキルの棚卸しによって、教育や引き継ぎが必要な領域を特定できます。
工数の棚卸しで負荷状況を把握する
業務一覧だけでは、実際の負荷状況は見えません。同じ「システム運用担当」でも、月に数時間しか発生しない業務もあれば、毎日の問い合わせ対応で大半の時間を使う業務もあります。
そのため、
- どの業務にどれだけ時間を使っているか
- 定常業務と突発業務の割合はどうか
- 特定担当者に業務が集中していないか
を確認します。
工数が可視化されると、「改善活動を進める時間がない」という状態についても、どの業務が時間を占有しているのかを具体的に説明できるようになります。
3. 現状可視化で判断できること──属人化対策から育成計画まで
現状可視化の目的は、一覧表を作ることではありません。次に取るべき施策を判断できる状態を作ることです。

業務標準化の優先順位を決められる
業務一覧と担当者情報を整理すると、属人化している業務が見えてきます。
例えば、問い合わせ対応の大半が特定担当者に集中している場合は、FAQ整備や手順書作成を優先すべきかもしれません。 逆に、既に複数名で対応できている業務については、優先度を下げる判断もできます。
改善対象を感覚ではなく実態に基づいて決められるようになります。
緊急時の対応体制を見直せる
担当者不在時に業務が停止するかどうかも判断できます。システム障害やセキュリティインシデントが発生した際、代替担当者が存在しなければ対応が遅れる可能性があります。
可視化によって、
- 代替要員が必要な業務
- 手順書整備が必要な業務
- 教育が必要な業務
を整理できます。
これは単なる人員配置の問題ではなく、業務継続性を考える上でも重要な情報です。
育成計画を具体化できる
スキル不足は、多くの情報システム部門で共通する課題です。ただし、「クラウド人材が足りない」「DX人材が必要」といった抽象的な議論だけでは育成計画を作れません。
まず必要なのは、
- 現在どのスキルを保有しているか
- 今後どの業務を実施したいか
- そのために何が不足しているか
を整理することです。
この整理ができて初めて、教育計画やOJT(実務を通じた育成)の対象を決められます。
新しい取り組みに使える余力を把握できる
DX推進やAI活用に取り組みたいという声は多く聞かれます。しかし、実際には運用保守や問い合わせ対応に時間を取られ、新しい活動に着手できないケースが少なくありません。
工数を把握することで、
- 業務効率化の対象
- 外部委託を検討すべき業務
- 自動化候補
- 新規施策に投入可能な時間
を整理できます。
改善活動の議論を始めるための土台になります。
4. 可視化を一度で終わらせないための運用ルール
現状可視化は、一度実施して終わりではありません。組織や業務は変化するため、継続的に更新できる仕組みが必要です。
特に情報システム部門では、新しいシステム導入や業務追加によって担当範囲が変化し続けます。そのため、業務棚卸しの結果を維持する仕組みとして、タスク管理やチケット管理の運用を整備することが重要です。
例えば、問い合わせ対応や障害対応を個人のメールやチャットだけで管理している場合、業務量の把握が難しくなります。
一方で、チケット管理ツールを利用すると、
- どの業務が発生しているか
- 誰が対応しているか
- どの業務に時間がかかっているか
を継続的に把握できます。
ServiceNowなどのITサービスマネジメントツールを活用した運用については、以下の関連記事も参考になります。
また、ツールだけでは運用は定着しません。
- 登録対象業務の定義
- 更新ルール
- 報告方法
- 定期的な棚卸し頻度
などを決めておく必要があります。
可視化を継続することで、業務量やスキル状況の変化を把握し、組織運営の判断材料として活用できるようになります。
5. 情シス変革は「現状把握」から始まる

情報システム部門の変革では、新しい組織やツールの検討に目が向きがちです。
しかし、現在の業務内容、担当者、工数、スキルを把握できていない状態では、どの施策を優先すべきか判断できません。 まず必要なのは、業務・スキル・工数を整理し、組織の実態を説明できる状態を作ることです。
属人化している業務はどこか。どの業務に時間を使っているのか。どのスキルが不足しているのか。これらを把握することで、業務標準化、人材育成、業務改善の優先順位を決められるようになります。
Lv.1「管理・統制不全」からLv.2「既存システム安定稼働」へ進むための出発点は、現状可視化にあります。
6. 読者が自社で確認できるチェックリスト
- 情報システム部門の業務一覧を作成できているか
- メンバーごとの担当業務を説明できるか
- 各業務の月次工数を把握できているか
- 特定担当者しか対応できない業務を把握できているか
- スキルの過不足を整理できているか
- 緊急時の代替担当者を決められているか
- 改善活動に使える時間を把握できているか
- タスク管理またはチケット管理の運用ルールがあるか
- 業務棚卸しを定期的に見直す仕組みがあるか
7. 相談・お問い合わせ
「情報システム部門が忙しいことは分かっているが、何が原因なのか説明できない」「改善したいが、どこから着手すべきか判断できない」という場合は、まず現状把握から始めることが有効です。
当社では、情報システム部門の業務棚卸し、リソース配分の整理、担当業務の可視化、部門レベル評価を通じて、どこに課題があり、次に何を優先すべきかを整理する支援を行っています。
業務改善や組織改革を検討する前に、自社の現状を客観的に把握したい場合はご相談ください。