Interview:ECLエージェンシー株式会社
業務効率化で見えてきた新たな改革への道筋

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日本市場における中古車輸出のパイオニアであり、海運事業・貨物集荷事業・同代理店事業・輸出中古事業を行うECLエージェンシー株式会社。親会社であるイースタン・カーライナーの得意としてきたアジア・中近東への航路はもちろんのこと、複数のグローバル船社との緊密な関係を活かして、中南米をはじめ全世界のサービス航路を着実に拡大されています。2011年4月には”Used”に着眼し、中古車のターミナル運営や輸出貨物の船積を中心に事業を開始。現在では、日本国内での中古車輸出で20%のマーケットシェアをお持ちです。

そんな同社は稼働中のシステムを前提とした業務改善策として、定型業務をソフトウエアで代替するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)に着目。同社事業戦略室のメンバーとZEINで構成する専門チームのもと、通関業務の効率化をスモールスタートで進め、且つ将来的にはロボットを内製で運用する体制を視野に、ツールは管理統制に長けているハイブリット型の「UiPath」を選択されました。従来の業務フローを安定的に高い精度でロボットへ移行させることは、コスト削減だけではなく業務品質向上にも貢献しているそうです。

本インタビューでは同社の取締役副社長である坂東様と、約1年に渡ってプロジェクトを推進された森本様、半村様、原田様、本プロジェクトのプロジェクトマネージャーであるZEINの山岡がプロジェクトを振り返ります。

目次

  1. 導入背景
  2. 選定ポイント
  3. 業務概要
  4. 導入前ポイント
  5. 推進ポイント
  6. 導入後の変化
  7. 総括・今後の展望

1. 導入背景

海運業界特有の業務課題に対して、最新テクノロジーによる業務改善の一環としてRPAに注目。

取締役副社長 坂東様

– 御社が抱えていたビジネス課題はどのようなものがありますか?

海運業は、輸出に必要なドキュメントを大量に作ります。それもほとんどのドキュメントを英語で作成する必要があります。大手船会社はシステム化が進んでいたり、海外へのオフショア化が進んでいるのですが、弊社ではシステム化が進んでおらず、人力で行っておりました。そのため、残業が100時間を超えるのは当たり前で、中古車1台あたり2,200円もの通関コストがかかっていました。(坂東様)

– なぜRPAを導入しようと考えられたのでしょうか?

会社に対して何か新しい技術を使って貢献できないかと常日頃から考えている中で、たまたまインターネットでRPAの記事を見つけて、「これは使えそうだ!」と思い調べ始めたのがきっかけです。(森本様)

2. 選定ポイント

製品ありきではなく課題を解決するために最適な製品を選定。
ECLエージェンシーとZEINが共同しRPA導入へ。

ターミナル事業本部 事業戦略室 森本様

– 製品やベンダーの選定はどのように進められましたか?

当時(2018年6月頃)、主流だったWinActor、Bizrobo!、UiPathについてそれぞれの機能や、コスト、販売代理店がどのようなところがあるかなど、一通り調べました。セミナーに参加して情報収集しながら、販売代理店とお会いしてお話を聞きました。(森本様)

– そのタイミングで弊社にもお声がけいただいたと思いますが、何をきっかけに弊社を知りましたか?

情報収集する中で、インターネット上でたまたま御社を見つけて、HPから問合せさせていただいたのがきっかけです。(森本様)

– 今回は弊社でUiPathを導入させていただきましたが、数ある製品やベンダーの中から選定された決め手はどこにあるのでしょうか?

多くの導入ベンダーは、製品ありきでRPAでこんなことができますよという説明だったのに対して、御社はそれぞれの製品を説明いただいた上で、御社の課題にはUiPathがいいのではないかという提案をいただきました。はじめから製品を決め打ちするよりも、製品それぞれの特徴を踏まえた上で、弊社にマッチする製品を導入したいという思いがあったので、御社でUiPathを導入していただくということに決めました。(森本様)

3. 業務概要

多種多様な形式の書類からのデータ登録業務。
定型業務ではあるものの負荷は膨大。

– 今回対象となった船積指図書のデータ登録業務とはどのような業務なのでしょうか?

お客様からいただく船積指示書(S/I:Shipping Instruction)に記載された情報を、船積指図書(S/O:Shipping Order)と呼ばれる伝票に転記し、船会社へ提示するという業務なのですが、十数社あるお客様ごとにエクセルやWeb、その他システム等様々な形で船積依頼書が届いていました。マクロを活用して船積への自動入力はこれまでも行っていたのですが、一部の独自システムから来るものはマクロでの対応が出来ず手入力で実施しており、かなり苦労していました。(原田様)

– 業務頻度や作業時間はどのくらいかかっていたのでしょうか?

貨物船は月の中旬から下旬にまとまって来るのですが、1つの貨物船に数百台、月1,200台くらいの台数を輸出しています。S/O入力業務は、毎月その時期の2~3日で一気に行っています。入力・チェックで1件当たり3分程度、月に約60時間かかっておりました。その2日間は4名がかかりっきりで作業をして対応していました。(原田様)

4. 導入前ポイント

上層部の理解を得ることがプロジェクト開始に向けたキーポイント

– プロジェクト開始に向けた社内承認を得ることが難しいという話をよく耳にするのですが、御社ではどのように社内稟議を進められたのですか?

上層部の理解を得るところが第一関門でしたね。RPAというもの自体が分からない中で、まずは、デモンストレーション行うことで、上層部にRPAを体感してもらい、理解を得られたのが社内稟議を進めるうえで大きなポイントになったと思います。また、RPAを導入することが目的ではなく、あくまで運用支援のツールとしてRPAを活用するというスタンスで常に進めました。(半村様)

コストシミュレーションも当然大事ですが、会社の体質的にはトライアルで投資対効果を検証し、本格導入を行うという進め方はあまり合わず、一回の稟議で承認を得て、結果をコミットするという形を取ることでスムーズに進めることが出来ました。(森本様)

5. 推進ポイント

現場の担当者との意識合わせが効果を最大化させるポイント。

ターミナル事業本部 事業戦略室 半村様

– 今回のプロジェクトを振り返って苦労された点はありますか?

S/O入力業務とは別の業務でもロボットを作成していただきましたが、そちらの業務は作業頻度も作業量も多いのですが、時間的にみると入力するよりそのあとのチェック作業に時間がかかっていたので、現場の担当者からはチェック作業が減らないのであれば効果はない、という評価を受けてしまった点がありますね。我々が想定していた効果と、現場の期待値にミスマッチがありました。(半村様)

– お二人が考える導入推進のポイントはどこにあるのでしょうか?

現場がどのくらい実際に自分の手を動かさなくてよくなるのかが分かれば、それで協力してくれるようになりますし、自分の作業があまり減らないということだとあまり協力してくれない、ただそれだけなのかなと思います。(森本様)

社内でロボットという言葉が独り歩きしてしまっている部分があり正しく理解されていないので、啓蒙活動を行っていくことで、現場のロボットの理解が深まれば、自動化したい業務の候補が次々と出てきて、加速的に進んでいくかなと思います。(半村様)

– プロジェクトマネージャーとして導入を行ったZEIN山岡さんは、今回の導入のポイントはどこにあると考えますか?

実際にその業務を担当されている方との会話が、RPA導入の上でとても重要だと思います。どういったポイントで苦労されているか、また普段の作業の中で工夫されているポイントはないか、などリアルな声を伺うことで、こちらのロボット化のイメージをより具体化することができました。また、森本様、半村様にも打ち合わせに参加頂き、実務担当とは異なる立場の方に業務の実態を改めてご認識頂くことで、そもそも今のやり方の踏襲でいいのか、やり方の見直しから手を付けた方が良いのか、といった観点からも検討を進めることができ、効率的・効果的に導入を進めることができたのではないかなと思います。(山岡)

6. 導入後の変化

作業時間短縮による残業時間の削減。ロボット実行中の働き方にも変化。

– RPA導入によってどのような効果がありましたか?

入力作業はすべてロボットがやってくれるため、入力後のチェックだけでよくなり作業時間を75%削減することができました。また、月中、月末の繁忙期には毎日5時間程度の残業をしていたのですが、残業はほとんどなくなりました。(原田様)

– 作業時間や残業時間以外に効果を実感するところはありますか?

今までは入力後のチェックにも神経を使っていましたが、ロボットは入力ミスがそもそもないので、チェック自体も楽になりました。船会社へS/O提示後に入力ミスが発覚すると、S/Oを訂正し、改めて船会社へ提示しなければならないのですが、訂正作業をする必要がなくなったのは効果として大きいと感じています。また、ロボットを起動した後は別の業務に取り掛かれるので、働き方としても非常に楽になりましたね。(原田様)

7. 総括・今後の展望

業務効率化の範囲拡大と新規事業転嫁ににより加速的なビジネス拡大へ。

– 経営者視点でRPA導入の結果をどう捉えていますか?

RPA導入前の中古車1台当たりに係る通関コストが2,200円程度でしたが、RPAを導入して1台あたり1230円まで抑えることができました。弊社で取り扱っている車両数は月20,000台程度なので、月間2,000万円の削減効果が出ています。残業時間も大幅に減っており、経営者としてはこの結果に満足しています。(坂東様)

– では、業務担当者視点ではいかがでしょうか?

大量データの登録は体力的にも精神的にも負荷が高いものだったので、ロボットが作業してくれることで大変楽になりました。この作業は本当に苦痛だったので(笑)(原田様)

– ZEINに導入を依頼して良かった点などあったらお聞かせいただけますか?

弊社の視点に立って協力的に進めていただいたというところが非常に大きいです。システムを作って終わりというベンダーが多い中で、稼働後の状態も気にしてくれますし。(半村様)

RPAの導入はロボットを作って『削減効果を出したら終わり!』というようなイメージを受けますが、RPAは削減効果を出した後もほかの業務に手を伸ばして、どんどん範囲を拡大していくものだと思うので、一緒になってお互いにWin-Winな関係を築けた会社さんでよかったと思います。(森本様)

– 最後になりますが、今後どのような取り組みをされていきますか?

RPAとしては、S/O入力に留まらず自動化の幅を広げていき、通関コストを800円程度まで削減していきたいと考えています。事業経営としては、中古車輸出のマーケットシェアを20%から30%に拡大しつつ、「Used」をキーワードにした新規商材を取り扱っていきたいと考えています。(坂東様)

今回対象となったS/O入力の中で、自動化しきれていない荷主様の船積指示書について、入力フォーマットの統一を行うことで自動化していきたいと考えています。(原田様)

現在の業務の進め方に満足している担当者が多いので、意識改革を行っていきたい。そのためにはまず、我々がロボットを作れるようになり、そういう領域に積極的に踏み込んでいって自動化による業務効率化を進めていきたいと考えています。(森本様)

弊社のビジネスにAIを活用した成功事例を作っていきたいというところと、システムチームに求められているコストと時間の削減をどこまで効果がだせるのか追求していきたいと考えています。(半村様)

会社概要

社名ECLエージェンシー株式会社 (https://www.ecl-agency.com)
創業年月2011年4月
資本金9500万
株主イースタン・カーライナー株式会社 (https://www.ecl.co.jp/)
従業員数122名
所在地【東京本社】〒103-0027 東京都中央区日本橋2-15-3 ヒューリック江戸橋ビル3階
事業拠点【支店】大阪、名古屋、福岡
【国内ターミナル】川崎、木更津、横浜、名古屋(推奨モータープール)、泉北、神戸、博多、新門司
事業内容イースタンカーライナー㈱を始め、契約する外航海運会社の自動車専用船、多目的船への貨物集荷事業及び代理店事業。
又、コンテナ船を利用した世界各国への中古車輸送に関連する貨物集荷事業及びVANNING事業。
全国に配置した中古車両・中古建設機械などの輸出ターミナルを利用した輸出中古事業者向けの各種サービス事業